2012年04月11日
№97・4月10日『哭きの竜』(95年 監督・小林要)
関東を仕切る桜道会系甲斐組組長の甲斐正三(西岡徳馬)は昔会った伝説の雀士「哭きの竜」(川本淳一)の神がかり的強さに感服、組の守り神として引き入れたいと考えていたが、竜はその誘いに一向に乗らず。甲斐組と美好組の抗争が激化し、過去の因縁から大阪海道組の命令で竜を殺るのを義務づけられていたチンピラのテツ(軍司眞人)は竜を追い回す内に彼を慕う夏枝(荒井乃梨子)に惚れてしまい、竜に夏枝を解放して欲しいと頼むが冷たく無視される。海藤と美好が手を組んだ事でテツの標的は正三へと変わり、襲撃され瀕死の重傷ながら正三は竜と美好が卓を囲む現場へ…。 1985年から90年まで竹書房の漫画誌『別冊近代麻雀』で連載された能條純一の劇画の実写映画化。竜が牌を額の前辺りに掲げる独特のポーズは麻雀自体にはド素人な上原作を殆ど読んだ事のない俺でも知っていたぞ(笑)。徒党を組むのは良しとしない一匹狼の竜と彼に惚れ込んだヤクザの組長との修羅場に生きる物同士の絆を描く。映画初出演にして主演を務めた川本淳一は当時は『スーパー・エキセントリック・シアター』の劇団員で、その縁から『スーパー~』主宰者である三宅裕司が美好役で特別出演。 麻雀をテーマに取り入れた映画としてまず思い出されるのは阿佐田哲也原作の『麻雀放浪記』(84)。あれは原作未読者でも麻雀ど素人でも分かる様に演出された純娯楽作品として成功していたと思う。03年に要潤主演で『雀鬼くずれ』という作品が公開されこれは一般向けとは言い難い作品ではあったが、それでも賭け麻雀という世界の厳しさみたいな物は一応は伝わってくる佳作レベルのB級映画。本作はその二本の作品の、丁度中間の時期に製作公開された作品なのだが。 まず原作ファンからするとあまりに強烈なカリスマ性を秘めた竜というキャラが実写化された事でイメージを損なわれたという不満はありそうだな。ほぼ新人と言ってもいい川本はどう見ても無情の世界に生きる一匹狼役には青臭すぎて不向き。『ゴルゴ13』の実写映画が怪作扱いされている事からも分かる様に、劇画の「寡黙な主人公」というのは実写には向いていない気がする。 原作には門外漢の人間からすると本作のテイストは当時興隆期にあった「ヤクザVシネ」その物で麻雀というテーマヤクザドラマの付け足しにしか思えない。更に竜と正三、竜とテツの過去のしがらみも原作ではともかくも映画では思わせぶりにしか描かれておらず不明瞭、じゃヤクザ映画として完成度が高い…などとはお世辞にも言えないし、原作の人気に飛びついた物の咀嚼不十分に終始してしまった印象強し。ま、Vシネ系映画にはつきものの欠点ではあるのだが。凡作。 最近はこの手のVシネシリーズスタートの景気づけに一作目だけは劇場公開される(本作もそうみたいだ)ケースも殆ど無くなってしまったな。大抵は新宿での単館公開だったのだが、現在それらを上映していた映画館自体が消滅しているのだ…(★)
Posted by fflsqkxdll at 14:01│Comments(0)